新種の男
ツォップというパン屋さんで食事をしていたら、隣のカウンター席に2人の大学生らしき男子がやって来た。
こんな場所に男2人で来るなんて…。
と思いながらその2人を見たら、俗に言う「早食系男子」だったので少し納得した。
2人はカウンターに座るなり、外国のパンに比べると、日本のパンはパンじゃない!
と、パンについて早速熱く語り出した。
熱く語るスイッチを入れるのが早過ぎる。
パン職人を目指しているのか?と思ったが、でも米はやはり日本が一番だ!という事も熱くなりながら言っていたので、別にそうでもなさそうだ。
どちらにせよ、天気のいい日曜の昼間から男が2人で話す会話ではない。
私は何だか2人が非常に気になってしまった。
タイプの男とかそういうのではなく、何だか新種の男だなァと感じたからだ。
弱い!薄い!頼りない!の3拍子揃ったその男2人からは、生命力が全く感じられない。
しかし現に存在しているのだから、今まで何をエネルギーにここまで生きてきたのか興味があるのだ。
すると突然一人の男が、「かもめ食堂は最高の映画だ!邦画で一番だ!」とキッパリ言い切った。
私はギクッ!とした。
私もかもめ食堂は大好きな映画だ。
だから普通ならここで、こいつも好きなのか。そうか。そうか。と喜ぶべきなのだろう。
しかし違うのだ。
この映画を男がキッパリ好きだ!と言ってはダメなのだ。しかも邦画で一番だ!なんて言ったら、俺は本当は女です。と言っているのと同じだ。
フェロモンムンムンのワイルドな男が、「かもめ食堂?ああ、あれコイツ(彼女)が観たいっていうから観たら、意外と悪くなかったよ」
というのならいいのだ。
しかし見た目がいかにもの男が「かもめ食堂大好き!」なんてもう、ギャーーーーーッ!!!!!!となってしまう。
あまりにひねりが無さすぎる。
私は軽いカルチャーショックを受けた。
今まで男が好きだった、野球、車、ヒーローもの、女、などにはひとつも関心がないのだ。
思考や言動が完全に女なのだ。
それも私みたいな女ではなく、an・anやオズマガジンを愛読している若いOL風の女だ。
多分この2人は毎週末、ちょっとお洒落な美味しいお店に行っては、映画や雑貨などの話をして楽しんでいるに違いない。
女の子と付き合うなんて、全く考えられないのだろう。
私は、新しいジャンルが生まれているんだなァと関心した。
そして、ちょっとあんた達亀有で一度降りなさい!詳しく話を聞こうじゃないの!という心境になった。
なんて、向こうからしてみたら私は新種の女に見えるんだろうなァ…。