デイリーMoccoly

ニューヨークのおじさま

現代美術の新しい流れとなったポップアートに取り組み、ニューヨークを拠点に活躍した「後藤克芳」という作家がいた。
今はお亡くなりになっているのだが、実は20年くらい前にマンハッタンのど真ん中のご自宅に1週間ほど滞在させていただいたことがある。
母レイコの友人が後藤のおじさまと親族関係にあり、母レイコとレイコの友人達と一緒に宿泊させていただいた。
後藤のおじさまは奥様と猫と住んでいた。
おじさまは見たからに天才肌といった雰囲気で、頑固一徹な感じがとてもイイ味を醸し出していた。
一見ニューヨークとはかけ離れているような風貌だけど、その自由で独自のスタイルは、日本じゃない!と感じさせた。
近寄りがたいが親しみやすい、といった両面を持っていて物凄く味がある方だった。
しかし滞在中私だけ別行動を取っていて、毎日夜遅く寝に帰るだけだった為、同じ屋根の下にいながらほとんどおじさまと会話した記憶がない。
今となってみると凄くもったいない事をしたと思う。
今だったらどこにも出かけず、1日中おじさまのお話を聞いていると思う。
もっといろんなお話を聞きたかった。

そんなおじさまの回顧展【後藤克芳 ニューヨークだより】が初めて東京で開催されたので行ってきた。
滞在していたお家にもたくさん作品があったが、ちゃんと見るのは今回が初めて。
作品は全て生活に密着していた。
生活の延長が作品というか、生活がそのまま作品になっていた。
そして今でもしっかりと生きていた。
見ていくうちにジワジワとカラダに沁み込んでいき、私の隙間が埋まった。
と同時に、芸術の原点を感じた。
ダンスや音楽と同じように、やはり生活からしか生まれない。
だから本来特別なものでも何でもない。
いつから特別な物になってしまったのか?
地に足が付いた作品からは、おじさまがニューヨークでしっかり地に足を付けて生活を営んでいた様子が滲み出ていた。
お家にあった絵画も展示されていて凄く懐かしい気持ちにもなり、カラダが満たされ満タンになった。

ニューヨークのおじさまの家での1週間は今思うと物凄く貴重な体験だった。
当時の私はまだ若過ぎて、おじさまよりニューヨークの街の方に意識がいっていたと思うが、しかしそれでも自分歴の中でインパクトがある登場人物の1人に君臨している。

おじさま、ありがとうございました!

※大好きな井上順さんもツイッターで紹介していた。

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